負債総額124億円以上、大手医療脱毛クリニック破産手続きの詳細
24年12月、大手医療脱毛「アリシアクリニック」が破産
医療脱毛大手のアリシアクリニックが2024年12月に突如全店舗で臨時休業を発表。その後、運営元である医療法人社団美実会・一般社団法人八桜会の2社の自己破産決定が報じられた。この影響による負債総額は124億円以上、被害を受けた債権者は9万人を超えており、一部では「過去最大規模の消費者被害」と報道されている。2011年に設立した医療法人社団美実会は、自由診療にて全身医療脱毛・医療レーザー脱毛などを行う「アリシアクリニック」を都心部を中心に全国に43店舗を展開していた。アリシアクリニックは「万が一施術予約をキャンセルしてもペナルティがない」「契約店舗以外でも施術を受けることが可能」などの顧客に寄り添ったサービス提供を行う姿勢を示しており、多くの利用者からの支持を集めていた。テレビCMなどで知名度を高め、ピークとなる2021年には売上高約163億1500万円を計上していた。一般社団法人八桜会は、医療脱毛クリニック「じぶんクリニック」を運営していたが、2024年に施設名を「アリシアクリニック」に変更していた。破産時の2社の合計負債総額は債権者9万1818人に対し124億7133万円に上る。
脱毛業界のこれまでの破産
需要の拡大に反して破産が目立つ脱毛業界
近年、若い世代だけでなく介護脱毛など需要が高まっている脱毛サロンだが、倒産数は年々増加している。2024年の1年間だけで16件もの脱毛サロンが倒産し過去最多を更新した。直近2年間で少なくとも27.1万人の脱毛サロン利用者が経営破たんによって被害を受けたとみられる。アリシアクリニック以外にも、脱毛業界では被害者が多い大型倒産が目立つ。「シースリー」運営の(株)ビューティースリーは負債総額80億円・債権者約4万6,000人で倒産(2023年)、「銀座カラー」運営の(株)エム・シーネットワークスジャパンは負債58億5,700万円・債権者約10万人で倒産(2023年)、「脱毛ラボ」運営の(株)セドナエンタープライズは負債総額60億円・債権者約3万人で倒産(2022年)した。どのサロンも全国に複数の店舗を展開する中・大規模の企業である。
脱毛クリニック破産の考えられる要因
過去最大規模の消費者被害、その原因は?
様々な経営課題が破産理由と考えられるが、特に「低価格化へのシフトによる価格競争」と「新規顧客獲得のための莫大な広告費」がトリガーになったと指摘されている。
‣「低価格化へのシフト」:
2023年に湘南美容クリニックが医療脱毛の施術金額を大幅に値下げし、これにならい競合各社が低価格化へとシフトせざるをえなかった。
‣「膨大な広告費」:
アリシアクリニックは、有名モデルやタレントを起用した大々的なテレビCM・Web広告に加え、SNS戦略として人気インフルエンサーにPRを依頼するなどを行い新規顧客開拓を行っていた。しかし、顧客獲得のための過剰な広告宣伝費が重荷となり業績が悪化、2023年の時点で医療法人社団美実会は赤字に転落している。
脱毛クリニックが直面する問題は「顧客獲得難易度が高いこと」
脱毛業界は
▸参入障壁が低い
▸差別化が難しい
▸一度施術が完了するとリピート利用は見込めない
という業界特性がある。
脱毛業界は脱毛機材の入手が容易であり、且つ施術の再現性が高いことから参入障壁が低く、競合が多く存在する。また、一度施術を完了してしまえば再度顧客になることはないため、常に新規顧客を開拓する必要がある。競合の多さとリピート顧客が見込めないという理由に加え“提供するサービス”の差別化が難しいことから顧客獲得難易度が高く、顧客獲得戦略として値引き合戦や広告費用を多く使用したことが倒産の要因のひとつと考えられる。
脱毛アフィリエイト広告の功罪
新規顧客獲得のWEB上の主戦場はアフィリエイト広告
既に破産をした全国展開をする某脱毛サロンは年間約80億円の広告費を使用し、半分がマス広告、もう半分がWEB広告となっており、WEB広告のうち約70~%はアフィリエイト広告に出稿していた。アフィリエイト広告のシェアが大きいのは脱毛サロン/クリニックを申込するユーザーがアフィリエイト広告掲載がされている比較サイトや美容情報サイト経由が他WEB広告(リスティング広告・バナー広告・SNS広告・動画広告など)に比べ圧倒的に多くなっていることからだ。
脱毛アフィリエイトサイトにおける掲載動向
有象無象とある脱毛アフィリエイトサイトにおいてもパワーバランスは2:8となっているため、実際に大きなシェアをとっているサイトは一部の有力サイトとなる。有力サイトにおいて上位掲載をした場合の相場は、(申込)で40,000~50,000円/件のレンジとなり、これらのサイト経由で上位掲載をしている脱毛業者は100~500件/月の規模感で新規獲得ができている。
脱毛アフィリエイトにおける闇
アフィリエイト広告の出稿先である比較サイトはリスティング広告などと異なり、ランキング形式となっているため、ユーザーにパーソナライズされておらず所謂「枠売り」となっている。入札条件がよい脱毛クリニック(サロン)が上位掲載され獲得にも繋がりやすいため、各社が鎬を削り過当競争になっている。さらに、主要脱毛各社のアフィリエイトを扱うASPやアフィリエイト代理店は、ごく一部の業者が扱っているため、入札単価の吊り上げに繋がるマッチポンプのようなことが一部発生していることは否めない。これは脱毛アフィリエイトに限ったことではなく、他ジャンルのアフィリエイトにおいても往々にしてあり、利益相反が発生している。海外のエージェンシーの様に1業種1社制や国内大手代理店のような情報の取り扱いリスク管理を徹底しているわけでなく、広告主A社と競合にあたる広告主B社の案件を同じ担当者で扱っていることも多々ある。これらのアフィリエイト広告業界に纏わる悪しき風習は、アフィリエイト代理店による取り扱う広告主の実績データを使用して、競合各社へセールスを促進することが発端となっているが、広告主サイドも「同ジャンルにおける他社実績が豊富だから」という理由で業者を選定してしまっているが、競合他社を扱う業者に寄せるということは上記のような恣意的な単価の吊り上げが起こりうるリスクや、自社のデータが他社に使われるリスクなどを勘案して検討することが肝要だといえる。
失敗しない脱毛アフィリエイト広告のとるべく運用管理は
仮に、脱毛有力アフィリエイトサイトへ報酬単価50,000円で月間300件の獲得ができた場合、15,000,000円の広告費が発生する。しかし、顧客の契約率が7割で且つ平均契約金額が100,000円(参照元)だった場合、21,000,000円の売上となり約70%が広告費を占めることになってしまい適正な水準を大幅に超え、その他諸経費(人件費・機材代・物件費など)を勘案するとROASの担保ができない。当然、ROASの担保ができる、その他のサイトや施策で全体の均衡を図ることになるが、2:8のため有力サイトの比重が重くのしかかりマネタイズモデルを構築できていないから前述に記載のとおり、広告費がトリガーとなって業界大手にも関わらず破産が相次いだ状況となった。単純なことだが、これは広告主サイドも代理店も件数至上主義になって適切な管理が出来ていないといえる。
失敗しないために取るべく脱毛アフィリエイト広告の運用管理はアフィリエイト視点ではなく、経営視点で運用管理をしていくことがポイントとなる。SQOOPYではクライアントの事業を成功させるために、経営視点でマーケティング戦略を設計し脱毛アフィリエイト広告の運用成功モデルがある。ぜひお気軽にお問い合わせください。
記事執筆者・監修者
SQOOPY株式会社